プロジェクトマネジメントにおける、「基本スキル」とはなんでしょうか?
「知識」と何が違うの? という方もいらっしゃると思います。
本記事では、「知識」と「スキル」の違い及び、最も重要な4つの「基本スキル」と、7つの「失敗要因と対策」について解り易く解説します。
私自身の体験も踏まえて、教科書的なことではなく、本質的なことについて解り易い表現でまとめて有ります。これを読めば、必ず明日からのマネジメントに役立ちます!!

こんな方是非読んでください
・現在、プロジェクトマネジメントに携わっている方
・これから、プロジェクトマネジメントに携わる方
・「知識」と「スキル」の違いを理解したい方
・プロジェクトの失敗要因を知りたい方
「知識」と「スキル」の違い
日常生活における「知識」と「スキル」(例)
子供の頃、ご両親に念願の自転車を買って貰い、「わーい!」と喜んだ皆さん大勢いらっしゃると思います。私もその一人です。
さて、早速乗ろうとして‥、直ぐに乗れましたか?、乗れませんよね‥。
以下に、自転車に乗る手順を書いてみました。
【知識の習得】自転車に乗る手順と乗り方を覚える
【スキルの習得】自転車に乗れるようになる
上記のように、手順は教えて貰うのですが、なかなか乗れるようにはなりませんよね。
それは、「知識」として「頭」では学んだが、「体」では、まだ学んでいないからです。
自転車に乗ってみるという「行動に移り」、何回も何回も転びながら繰り返し練習するうちに、「体」でも学んで乗れるようになる。これが「スキル」です。
ここまで来て初めて「自転車に乗れます」と言えるようになりますね。
そして乗れるようになった時の感動は、私も今でも忘れません!
プロジェクトマネジメントにおける「知識」と「スキル」(例)
プロジェクトマネジメントも同じことが言えます。「マネジメント研修を受講したり、マネジメント関係の本を読んだり、先輩から学んだり」しても、単に「知識」として「頭」で学んだだけなのです。
「頭」で学んだことを、「行動に移し」、「体」で学ぶことが出来てはじめて「スキル」を習得したことになります。
【知識の習得】進捗管理ツールの仕様と操作はマニュアルで理解した
プロジェクトで使用することになった、進捗管理ツールの機能と操作方法は、マニュアルを熟読して理解した。
【スキルの習得】進捗管理ツールを使いこなせる
プロジェクトで使用することになった、進捗管理ツールについて、マニュアルで理解した事を実際に操作(行動に移した)してみて、一通り使いこなせるようになった。
基本スキル(PMBOKベース)
プロジェクトマネジメントにおける、必要なスキルについて述べます。
尚、本記事は、グローバルスタンダードと言われている、「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」PMBOK(Project Management Body of Knowledge「ピンボック」)の知識をベースにし、私の経験を加味した内容となっています。
プロジェクトマネージャの役割
PMBOKをベースに説明します。
役割 | 内容説明 |
---|---|
統合者 | プロジェクトの目的やゴール(成果物)を明確にし、達成すべき評価指標や成功基準を決定する。チームを統率して、プロジェクト目標を達成する。 |
コミュニケーター | プロジェクトを円滑に運営する為、適切な情報を、適切なタイミングでプロジェクト関係者に伝える。 |
チームリーダー | 発生する問題を解決し、 異なる部署から集まったメンバーをまとめ、 プロ ジェクトをコントロールする。 |
意思決定者 | リソース割当、品質維持のコストとスケジュールのトレードオフ、 スコープ変更などの様々な問題の意思決定をする。 |
トーンの設定者/醸成者 | チームメンバーが互いに協力し合う風通しの良い雰囲気作りを行い、メンバーが 互いに敵対しないよう気を配り調整する。 |
基本スキル
マネジメントの必要なスキルについて全て語るには、一つの記事では重くなってしまいますので、本記事では、数多くあるプロジェクトマネージャ職務の中で、最も重要で有ると提唱されている、4つの職務について解説します。
職務 | 内容説明 |
---|---|
プランニング | プロジェクト開始時点の最初のステップであり、スケジュール、タスク、コスト、必要なリソース計画を具体化する。 |
組織化 | 必要なリソースを調達し、プロジェクト体制の確立を行う。 |
リーダーシップ | プロジェクト方針の決定、人々の方向づけ、動機づけを行う。尚、「リーダシップ」と、「マネジメント」の違いは、以下のように説いている。 ■リーダシップ…ビジョンの立案と共有、挑戦、メンバーへの指示と指導、長期視点。 ■マネジメント…目的の達成、要求事項への適合のコントロール、短期視点。 プロジェクトが円滑に機能するように管理する。 |
コントロール | プロジェクトのプラン(スコープ、コスト、スケジュール)に沿って、プロジェクトを運営し、 進捗の予実を監視、 評価、対処する |
プロジェクトマネージャの適正
最も重要な、プロジェクトマネージャの最も重要な4つの適正は。
1.他人と上手く仕事が出来ること。(重要!)
2.自分の専門分野での経験が豊富である。
3.管理者としての経験が有ること。
4.利益志向で、交渉能力が有ること。
プロジェクトが失敗する原因
プロジェクト開始時点で立てたプランの通りにプロジェクトが進むことはまれで、プラン通りには行かないのが普通です。
所が、そのことを認識せずに、「プラン通りにいく」ことでしか物事を考えていない「プロジェクトマネージャ」の元、プロジェクトを推進すると悲惨な結末を迎えることになります。
以下に、具体的に、プロジェクトが失敗する可能性が高い要因を列挙します。
【プロジェクトが失敗する可能性が高い7つの要因】
1.技術重視のプロジェクトマネージャは失敗しやすい
プロジェクトマネージャ(PM)が技術ばかりを重視し、視野が狭いと、プロジェクトは失敗しやすいと多くの文献で指摘されています
その理由は、PMが新しい要件に直面した際、本来なら「プロジェクト全体として認めるか?」を考えるべきところ、技術的に可能かどうかだけで判断してしまうためです。
そのため、PMの人選は、技術だけでなくプロジェクト全体を俯瞰できる視点を持つ人物を選ぶことが重要です。
2.プロジェクトの成功の鍵は良好な人間関係
プロジェクトマネージャーとメンバー、メンバー同士、ステークホルダーとの「人間関係」は、とても重要です。関係がギクシャクしているとプロジェクトは失敗します。
円滑なコミュニケーションのために、「誰が・誰に・何を伝えるか」を明確に、正しい情報共有を行いましょう。これにより、風通しの良い環境を作り、信頼関係を築くことができます。
また、利害対立への適切な対応も重要です(詳細は項番7をご覧ください)
3.進捗管理に「あそび」が必要
こんなマネジメントしていませんか?
一日でも予定通りに行かなかったら、原因と対応策の書面報告をメンバーに求めている。
車のハンドルには「あそび」があり、少し回しただけではタイヤが動かないよう設計されています。もし無かったら、運転は極度の緊張を強くされ、疲れや事故が多くなります。
プロジェクト管理も同じです。適度な「あそび」(余裕)がモチベーション維持に必要です。
例、1~2日の遅れは口頭報告、3日以上の遅れは原因と対策報告するルールを設定
「あそび」が無いとどうなるか?
- 小さなミスも許されない空気が生まれるため、嘘の報告が増える
- 昨日まで順調だった進捗が、突然の大幅遅延に変わる
余裕を持った管理が、プロジェクト成功の秘訣です
4.プロジェクトの契約を営業任せにしない
- 経営主導で設定された非現実的な期限や、政治的政治の圧力による厳しい予算
- 一方的なプロジェクト目標の設定
これらのプロセスに、プロジェクトを管理するリーダーが関与していないと、適切な管理の前に、受注の時点でプロジェクトの成否が決まってしまう
そのため、プロジェクトのリーダーが契約締結の段階から関与し、納得した上でスタートを切ることが重要です
5.定例会議は定時内に設定を
「定時内では時間が確保できないから」と、定時後に定例会議を設定するケースがあります。しかし、これはプロジェクト管理側の都合であり、メンバーへの配慮が足りません。
突発的な会議は仕方ない場合もありますが、定例会議を定時後に設定するのは避けるべきです。
実は私自身、プロジェクトマネジメントの経験が浅いころ、この失敗をしてしまい、メンバーから強いクレームを受けました。
定例会議は、必ず定時内に設定しましょう。
また、やむを得ず昼休み時間に会議を行った場合は、代替の休憩時間を確保するなどの配慮も大切です。
6.要件定義書は、顧客要件を整理して記載する
顧客から受領した要件書の文面をそのまま引用するケースがあります。
この場合、要件書作成者の意図を正しく理解せずにをそのまま使うと、知覚や認識違いが発生しやすくなります。
そのため、要件を開発側の視点で整理し、わかりやすい形に落とし込んで記載することが重要です。
もし顧客の表現をそのまま使うと、レビューの際に顧客が違和感なくOKを出してしまうので、本当に必要な要件の整理ができない可能性があり手戻りが発生するリスクが高くなります。
要件定義書は、引用ではなく開発側として要件を正しく理解し、整理した上で作成することを心掛けましょう。
7.プロジェクト内の「利害対立」は正しく解決する
プロジェクト内で発生する利害対立の解決策として、最もベストなのは、「問題解決型(Win-Win)」のアプローチです。これは、両方が話し合い、改善策を出し合い、納得の上で結論を出す方法です。
しかし、これを実践せずに「強制型(Win-Lose)」、つまり片方の意思だけで強制的に物事を決める方法が日常化していると、人間関係はこじれます。
そのため、可能な限り「問題解決型(Win-Win)」を目指し、難しい場合でも「妥協型(Lose-Lose)痛み分け」で解決するようにマネジメントしましょう。
まとめ
プロジェクトの特性と人間関係
プロジェクトは、定常組織と違って、開始日、終了日が決まってスタートします。プロジェクトのメンバーも初めて一緒に仕事をする方が多いのが普通です。昨日まで一緒に仕事をしていなかった方々同士が今日から一緒に仕事をする訳ですから、人間関係を含めて上手く行かないのが当たり前です。
従って、人間関係を良くすることと、信頼関係を築くことが最も重要です。
その為の努力と工夫をする必要が有り、プロジェクトマネージャの腕の見せ所になる訳です。
プロジェクトは計画通りには行かない認識を持つ
プロジェクトは、計画通りには行かないものです。まずは、この認識をもつことが重要です。認識を持つことで、計画通り行かなかった時のことの対応を、予め計画に組み込む行動に繋がります。
例えば、「先行タスクの完了が遅延したら、後続タスクに影響が出るので、その間には「あそび」(余裕)を予め設定してスケジュール計画を立てる」等。
この認識を持たずにプロジェクトを推進すると、計画通り行かなかった時に、大パニックになってしまいます。
プロジェクトの成功とは?
最後に、皆さん「プロジェクトの成功」とはどんな状態でしょうか?
プロジェクト計画書に書かれた、「プロジェクト目標が達成した! 」でしょうか?。
⇒Q(品質)、C(コスト)、D(納期)の目標達成となりますね…。
しかし、プロジェクト目標が達成出来ても‥。
・メンタルで休職になったメンバーが複数名発生した
・人間関係に嫌気がさし、退職したメンバーが複数名発生した等、
「プロジェクト全体で見たらしこりが残った」というような場合は、真の成功とはいえないのではないでしょうか?。

つまり、真の「プロジェクトの成功」とは、「プロジェクトのステークホルダーが、皆ハッピー!になれた」ということではないでしょうか!
評判の良いお勧め書籍紹介
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1.『マンガでわかるプロジェクトマネジメント』(大橋悦夫、牧田幸裕)
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